2025年のサイバーセキュリティ投資額が過去最高の8.5兆円を記録しました。リモートワークの定着と巧妙化するサイバー攻撃への対応として、企業はセキュリティ戦略を根本的に見直し、ゼロトラストアーキテクチャの導入を加速させています。
投資急増の背景と要因
コロナ禍以降に定着したハイブリッドワークにより、従来の境界型セキュリティモデルの限界が露呈しました。企業ネットワークの境界が曖昧になる中、「何も信頼せず、すべてを検証する」ゼロトラストの考え方が急速に普及しています。
主要投資分野
- ゼロトラストセキュリティプラットフォーム(投資額の35%)
- エンドポイント検知・対応(EDR)(投資額の25%)
- クラウドセキュリティ対策(投資額の20%)
- AI活用脅威検知システム(投資額の20%)
ゼロトラスト導入の現状
大企業の78%がゼロトラストアーキテクチャの導入を完了または進行中であり、中小企業でも45%が導入を検討しています。特に金融、医療、製造業での導入率が高く、業界標準として定着しつつあります。
ゼロトラスト実装の主要コンポーネント
多要素認証(MFA)、条件付きアクセス制御、デバイス管理、ネットワークマイクロセグメンテーション、継続的監視システムが核となっています。これらを統合的に運用することで、高度なセキュリティレベルを実現しています。
AI技術の活用拡大
機械学習を活用した異常検知、行動分析による内部脅威対策、自動化されたインシデント対応など、AI技術の導入により従来比3倍の脅威検知精度を実現する企業が増加しています。
脅威インテリジェンスの高度化
外部脅威情報と内部ログデータを統合分析し、攻撃の予兆を事前に察知するシステムが普及しています。国内外の脅威情報を リアルタイムで共有する官民連携も強化されています。
セキュリティ人材不足への対応
日本国内のサイバーセキュリティ人材不足は約18万人と深刻な状況が続いています。企業は自動化技術の導入、外部SOC(セキュリティオペレーションセンター)の活用、従業員のスキルアップ研修に投資を拡大しています。
マネージドセキュリティサービスの成長
中小企業を中心に、セキュリティ運用を外部の専門企業に委託するマネージドセキュリティサービス(MSS)の需要が急増しており、市場規模は前年比45%増となっています。
法規制強化と企業対応
改正個人情報保護法、サイバーセキュリティ経営ガイドライン、国際的なデータ保護規制への対応が企業の投資を後押ししています。特に越境データ転送に関する規制対応が重要課題となっています。
サプライチェーンセキュリティ
取引先企業を含めたサプライチェーン全体のセキュリティレベル向上が求められており、中小企業向けセキュリティ支援策も拡充されています。
2026年以降の展望
量子コンピューティング時代に備えた耐量子暗号の研究開発、5G/6G時代のIoTセキュリティ、メタバース空間でのセキュリティ対策など、次世代技術への投資も本格化すると予測されています。
サイバーセキュリティは企業の事業継続性に直結する重要な経営課題として、今後も継続的な投資が必要不可欠な分野となっています。